この照らす日月の下は……
16
ギナ達にメールを送ってすぐ、カナードが月にやってきた。
「一般常識を学んで来いって言われました」
カナードがハルマ達にこう申告している。
「……十分だと思うが……」
彼の言葉にハルマはそう言いながら首をひねって見せた。
「あちらにはあちらの考えがおありなのよ。キラも喜んでいるし、いいんじゃないかしら」
カリダはそう言って笑う。
「カナード、ずっといるの?」
キラは彼の服の裾をつかみながらそう問いかけた。
「うん。少なくともラウの留学が始まるまでは」
今、あちらこちらがごたごたしていて自分の面倒を見ている余裕がないらしい。カナードはそう言って笑う。
「この前もムウに危なく蹴飛ばされそうになった」
彼のこの言葉にキラは目を丸くする。
これがギナならばまだあり得るかもしれない。しかし、年下のメンバーに優しいムウがそんなことをするとは思えなかったのだ。
「あらあら。ムウくんもまだまだお子様ね」
カリダがそう言って笑う。
「確かに。もう少し落ち着かないと、それこそ失敗するだろうに」
ハルマもそう言ってうなずいてみせる。
「だが、そういうことならば納得だよ」
そしてこう付け加えた。
「キラと同じ部屋でかまわないかな?」
「もちろんです」
ハルマの問いかけに間髪入れずにカナードは言葉を返す。
「何なら、ベッドも同じでかまわないです」
さらに彼はこう付け加えた。
「一緒?」
本当、とキラは彼を見上げる。
「だめよ。キラが甘えん坊になるから」
「ママ!」
いいじゃないか、とキラは言外に主張した。
「ミナちゃんからもそう言われているし」
しかし、カリダはこう言って微笑むだけである。こういうときの彼女はキラが泣いても意見を曲げないことも知っていた。
「さすがミナ様。根回しが早い」
カナードがため息と共にそうつぶやく。
「でも、まぁ……お互いに寝相が言い訳じゃないからな」
にこやかな表情と共に口にされた言葉にハルマは苦笑を浮かべる。
「どのみち、ベッドの手配には二、三日かかるよ」
その間は仕方がないね、と彼は告げた。
「ベッドの手配は終わっているそうよ。明日には来ると聞いているわ」
「それもミナちゃんかな?」
「そういうことね」
「……全く、あの人は……」
油断も隙もない。カナードがそう言う。
「今日は一緒?」
ベッドが来るのが明日なら、とキラは問いかける。今はそちらの方が重要なのだ。
「あぁ。一緒だな」
カナードもそう言って笑う。
「楽しみだな」
その言葉にキラはしっかりとうなずいて見せた。